サラリーマン常磐満作の時間

Top      南インドへの道  常磐満作( 導入部  第1話 〜 第4話 )


  この小説は、書籍として出版されました。2021年3月17日よりAmazon等で販売されています。

 後書きでは次のように述べられています。

 この小説は、独白を中心に展開されていきます。ト書きは最小限にして、独白の中で対話などの状況が確認できるようになっています。また、所々に往復書簡が挿入されているので、少し読みにくい嫌いがありますが、書簡もそれぞれの独白及び物語の流れを形作る要素だと思って読んでいただければ幸いです。
 常磐満作は、私が経験したと同様の平凡なサラリーマンです。昨今では六十歳前後はまだまだ働き盛りだと言われるようになりましたが、今から十数年前のこの物語が展開する頃までは、老境へ向かう一つの区切りの年齢だと思われていました。この主人公のように平凡なサラリーマンにとっては尚更のことでした。だがその平凡さゆえに、我々の誰もが日々囚われている大きな問題に彼は誠実に対応しようとしています。実際、彼の問題に答えようとする周囲の人々は、彼との対話の中だけではなく、彼と離れた場所でも問題を深めようとします。そこでも常にどこかの隅に満作はちょこんと居座っているのです。

 彼の友人のお坊さんは、満作は決して平凡な人間じゃないよと、満作の息子に語っています。平凡で憎めない満作に、我知らずそれぞれの哲学を心の中で語ることになるのでした。それはやがて終盤のお坊さんと満作の息子の往復書簡に至って、将来我々誰もが考えても良いような問題へと集約されていきます。すなわち、人間は誰でも運命的な出会いというものがあります。一人一人がそれぞれに異なる仕方で出会いに対応しながら、それぞれの人生に取り組んでいく、そこに孤独な戦いと同時に人々の不可思議なつながりがあるように思われます。それをありきたりに見える平凡な人々の独白の中で考えていこうとしました。ありきたりですが登場人物のほとんどは穏やかな心の持ち主です。そこでそれぞれが出会った相手との関係の中で、満作と同じように考え、語っていこうとしています。

 私が学んだインド古代思想、ヴェーダについても語られています。是非お読みください。